英国でのビジネスリサーチ
英国では世界的にも有名な新聞や放送メディアがあり、金融の中心地であるシティがあり、世界の大学ランキングで評価の高い大学など研究機関が多いので、世界中の情報が集まっており、ビジネスリサーチを行うには良い場所です。
英国メディアの特徴
日本のメディアでは例えば産経新聞と朝日新聞のように政治的なカラーを出しているメディアはありますが、一般的にいって日本のメディアは政治的には中立で、バランスが取れた意見を報道していると自負しているところが多いのではないかと思います。
一方英国のメディアにおいてニュースを分析するにあたり政治的なカラーを意識することは不可欠です。
なぜ英国のメディアにおいて政治色が強いのかというのは、そもそも社会が上流階級、中流階級の上、中流階級、労働者階級と4段階にはっきりと分かれていることが原因であると筆者は考えます。日本では「一億総中流」という言葉が1970年代に流行ったこともあるように、所得が人並みであれば中流階級であるということになっていますが、英国では所得のみならず社会的な地位や教育、職業などを総合して階級意識を形成しています。そして自分の帰属すると考えるグループの価値観を表しているメディアを選択します。
新聞メディアにおいては高等教育を受けた読者のためのブロードシートと呼ばれる日本の一般的な新聞のサイズの紙に刷られた高級紙、そのサイズの半分以下の紙に刷られた労働者階級のためのタブロイドと呼ばれるスポーツ新聞のようなエンターテインメントに特化した新聞に二分されます。
そして保守的、右派か、革新的、左派かという二分割がさらにあります。
今回のEUに関する投票に対する報道から見ても、政治的な区分は明瞭です。
英国の新聞の政治地図
EU離脱派
保守的高級紙
右派、保守派タブロイド
中道右派タブロイド
EU残留派
中道高級紙
革新的高級紙
左派タブロイド
中流以上の英国人に「あそこに立っている人はどの新聞を読んでいるのか?」と聞けば、自信をもって回答をする人が多いと思います。どんな服を身につけており、何を持っているのか、しゃべり方に訛りや方言があるのか、何歳ぐらいなのか、どういう職業であるようなのかなどで、総合的に判断ができると信じているというわけです。このような国では、あなたがどの新聞か言わずに「新聞によると…」などとコメントをすれば、「どの新聞が言ったのだ?」という質問が返ってくるということが予想できると思います。そのため英国の新聞でビジネスリサーチをする際には、政治色や対象読者層に注意する必要があると思います。